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★小話002-G59

「何だぁ?こりゃあ…?」
 緑髪に赤い鉢巻をした長身の青年が、手にした銃をくるくると色んな角度から確認するように見回している。
 彼の側には、黒髪の少年(こちらは白い鉢巻をしている)もいたが、それを黙って見て見ぬふりをしていた。
「……なあ、ガイ。…コイツ…最近、拾った銃なんだが…見た目は新品同様、…なのに中身は完全にぶっ壊れてやがるみたいだ。一体どう扱ったら、こんな壊れ方するんだか……」
 あまりに不可解な壊れ方をしていたため、機械好きな彼にとっては、少々理不尽なものがあった。一方、話しかけられたガイはというと特に興味を示すこともなく無関心だった。
「………ん? よく見ると、こんなところに『G59』なんて書いてあるが、………何だろうな…?これ……」
 銃には意味不明な英数字が書かれていたが、実は銃マニアでもある彼にも意味は分からなかった。
「……おい。ガイ、お前は、これが何の意味だか分かるか?」
 彼は少しの間考えたあと、側に居た黒髪の少年、ガイにその謎の文字の部分を見せながらそう訊いてみた。
 だが、ガイはナユタの方に振り向くことなく、透かさずこう答える。
「ナユタ、お前が分からないのなら、僕には尚更分かるわけがないだろ。僕に訊くのは見当違いってやつだよ」
「ま、まあ、そう言えばそうだが……一応、訊いてみたかっただけだ。そんなに不機嫌になるなよ」
 ナユタは苦笑した。
 ガイは、銃の事に関しては、あまり興味がないらしい。だが、いつもナユタには嫌というほど、銃についての話を聴かされているためか、最近では、銃に関する事もほんの少しは分かるようになった。が、同時に銃の話を振られる度に少し不機嫌そうな態度を見せる傾向がある。

 ナユタは、壊れた銃を修理しようと、一時間以上もそれに没頭していた。
 しばらくして、やっと直すことができたのか、一つため息をついたあと、その間、ずっと閉ざしていた口を開く。
「ふぅ………っと、よし!おい、ガイ!一応直してみたんだが……試しにお前、撃ってみないか?」
 何故かナユタはニヤニヤした顔をしている。
「………。ナユタ…お前、知ってて言ってるだろ?僕には銃なんて使いこなせないよ。それに…その顔…ちゃんと直ったのかも怪しいところだな。黒焦げになるのだけはごめんだ」
 あっさりと断られてしまった。
「っと……さすがに引っ掛らないか。あ~あ、つまらねえなあ。…せっかくちょっと遊んでみたんだがな……」
 そう言うとナユタは、その銃の引き金を引いた。
 すると、銃口からは銃弾ではなく、なんと、可愛らしい作り物の花が飛び出してきた。
「なんだ……結局直せなかったのか?」
 きょとんとした表情でガイはそれを見ていた。
「ああ。残念だが。それに『G59』の謎も、解明不能。ははっ。いい事なし。まさに『じ・ご・く』だ」

★小話024-走らないと

少年は不安げな表情を隠せないまま、何処へ向かうともなく、ただひたすら走っていた。
「どうしよう……オレ…オレ…!」
何かを言おうとするが、なかなか言葉には出せない。
「……姉ちゃんっ!!」
黄金に輝くその瞳には、うっすらと涙を浮かべていた。

1時間ほど走って、たどり着いた場所は、狐一族の住む村だった。夜ももうすぐ明けようという刻。まだ人の姿は、なかった……たった一人を除いては。
オレンジがかった金髪に碧の瞳をした少年が修行のために、ちょうど外に出てきたところだった。
「…トゥース!!」
金髪の少年は、びっくりして声のした方に顔を向ける。
「零斗?…どうしたんだ。こんな時間に……」
不安げな表情のまま、息も切れ切れ歩み寄ってくる零斗を見て、トゥースは、ただならぬ事態が起きていることを悟った。
「……まさか、…壱流の身に何かあったのか…!?」
「……あれは…あれは、オレがやったのか…?なあ、教えてくれ、トゥース!! あれは、オレがやったのか…!!?」
零斗は、狂ったように何度もそう叫んだ。そのまま、泣き崩れるようにして、しゃがみこむ零斗をトゥースが支える。
「落ち着けっ!零斗!一体何があった!? ……いや、言わなくても、だいたいは想像できる……とにかく落ち着け。零斗! お前は何も悪くない!」
その言葉を聴いたと同時に、零斗は叫ぶのをやめ、何かに怯えるように震えていた。
「……想像…できる…?? どういう…ことだ、それは。トゥース…お前、我の何を知っている?」
急に零斗の顔が、不安げな表情から恐ろしささえ感じさせる冷たい形相へと一変した。そして、自分を支えていた、トゥースの腕を強く払いのける。
「れ、零斗…!?」

「…トゥースとやら、……お前、どこまで我のことを知っている。……返答次第では、お前もあの壱流という娘と同じ目にあうことになるぞ…」
とても同じ人物とは思えないほどに重苦しい口調に、トゥースは、驚きを隠せなかった。
(これが……壱流の言っていた……ダーク零斗…か?……想像以上だな。ものすごい殺気を感じる…。まともに戦ったらさすがに、ヤバそうだ………だが…!)

そのときだった。まだ薄暗かった辺りを、朝日が照らした。
「…くっ!朝か!? ……残念だ。これから、たっぷりお前と話し合おうというところだったのにな…。トゥース…また会えるのを楽しみにしている…」

零斗は、不敵な笑みを浮かべながらそう言い残し、その場に倒れた。
トゥースは、とても複雑な表情で、しばらくじっと零斗を見つめていた。

「そうだ…。壱流は…、壱流は大丈夫なのか…?」
そう言うと、トゥースは、気を失った零斗を背負い、山猫族の村へと急いだ。